同居から始まる恋もある!?


―――

――



つう、とこめかみを一筋涙が零れるのに気づいた。

見上げた天井は、自分の部屋のものではない。


そうだ、今日はひさしぶりに武の家に泊まりに来ていたのだ。だから、あんな昔の夢を。


隣で気持ちよさそうに眠っている武をみて、どうしようもなくもどかしい気持ちでいっぱいになる。
胸をかきむしりたくなるくらいに、愛しい。

それと同時に、ここ最近のことを申し訳なく思った。


わたしの今一番近くにいて、一番わたしを知っている人はあなただよ。
そんなことを無償に伝えたくて、もぞもぞと布団の中を移動してぎゅっと武に抱きついた。


「……ん、サチ、どうした?」

「ごめん。起こした?」

「いいよ、全然」


武も、その長い腕を伸ばして抱き返してくれた。彼の吸う煙草の、スパイシーな香りに安心する。
こんなにも、心が満たされている。


「夢を見ちゃった」

「なんの?」

「武と出会ったときの夢」


そういうと、あからさまに嫌そうな顔をする武にわたしは小さく笑った。

< 39 / 173 >

この作品をシェア

pagetop