同居から始まる恋もある!?
大方、新聞の集金か宅配だと思っていたのに、ドアスコープから覗いた向こうには、キャップを深く被った男。
―まじで、誰だ?
わたしが人生で初めて付き合ったのは、すぐそこで寝転がっている武だから、元彼なんているはずがない。
ましてや、大学ではサークルにも所属していないから、なんの約束もなしに家を訪ねてくるような友人もいない。
バイト仲間でもない。
心当たりがなさすぎる。鍵を開けるのを戸惑っていると、容赦なくもう一度ピンポンとベルが鳴った。
余程切羽詰っているのか、男はきょろきょろと周囲を伺い、深く深く肩を落とす。
『どちらさまですか』
「………よかった!俺だよ俺!!」
一人暮らしの女の部屋を訪ねてきた、明らかに怪しすぎるその男。
巷で流行りの詐欺師を彷彿とさせるその言葉。ドアを開けるべきではない。頭では理解していたはずなのに、その声を聞いた瞬間、わたしは思わず鍵を開け、ドアを押していた。