同居から始まる恋もある!?
「がらがらで悪かったねェ、律君。うちの店員に酒まで奢ってくれてありがとう」
ふふふ、と静かに笑みを零しながらマスターがカウンターに戻ってきた。
そして酒の無くなった律に、自慢のスコッチウィスキーのサービスだ。
「……あ、ども、スミマセン」
律が気まずそうに小さく頭をさげる。
彼もマスターにだけは頭があがらないのだ。
マスターは、おそらく30代後半ぐらいかなと思うのだけれど、いつも顔には笑みを貼り付けているし、口調も穏やかで感情を表に出すことも少なく、年齢不詳。
豊富な知識でどんな客層も飽きさせず、トークセンスは一流。
彼の人柄に魅入られた人間が、幾度となくこの場所に足を運ぶのだ。
それは俺だって例外じゃない。
客として通い詰めたあげく、こうして彼と一緒に酒をつくって出しているのだから、とんだマスター信者だ。