同居から始まる恋もある!?
つい、反射的に開けてしまったドアを急いで閉めようとすれば、男は強引に身体を割り込ませて中に入ろうとしてくる。
「きゃあっ!ちょっと、離れてよ!」
「酷いじゃん、サチ!7年ぶりに再会したってのに、その態度はなに!?」
「あなたなんて知らない!いきなりなに!?ほんとに、信じられない!」
ぐいぐいと挟まった身体を外に押し出そうとするも、彼も一生懸命抵抗する。
「頼むー!お願いだから、入れて!いくとこない!まじで!」
「この、大嘘つき!絶対あるでしょう!例えば、オンナとかオンナとかオンナとか!」
「ぎゃー、千切れるっ、千切れちゃう!サチ、やめてっ!」
ぎゃあぎゃあと玄関先で騒いでいれば、「サチ、大丈夫か?」とリビングと玄関を隔てるドアのスモークガラスの向こう側から武の声がした。
サアア、と顔から血の気が引く。
「武、ストーップ!来ないで…っ」
「来ないでって、何をさっきから」
ドアが開いて、武がわたし達の前に現れる。
玄関でドアに挟まれたままの彼が、よじよじと隙間をぬって侵入を終えた。そして、半裸姿の武を見つけて、一瞬その涼しげな瞳を大きく見開いた。
……ほんとに、ほんとに、最低最悪だ。
「きみ、サチの彼氏かなんか?」
「…そうですけど、あなたは」
キャップをサッと外すと、さらりと漆黒の髪が、その日焼け知らずな白い肌にかかる。
「はじめまして、サチの兄ちゃんです」
にこりと、幼い頃から周囲の人間を魅了してきた笑顔を惜しみなく浮かべて言った。