同居から始まる恋もある!?



「……やめて、聞きたくない!」


無意識のうちに、わたしは勢いをつけて立ち上がっていた。
プラスチックのカップに入ったカフェオレが倒れて地面に落ちる。バシャリと嫌な音をたて、茶色い染みを広げていく。

すぐにハッとして、慌ててカップを拾い上げた。


「ご……ごめん、美帆!ちょっと、何言ってんだろわたし…」


完全なる、八つ当たりだ。

美帆は、ゆっくりとわたしの顔を見て、小さく笑った。染みがついてしまった名刺をそっと紙ナプキンで拭い、大事そうに鞄へとしまう。


「なあんだ、やっぱりね」

「……え?」

「サチだって、芹生さんが好きなんじゃない」


くすくすと笑いながら、美帆はぐりぐりと灰皿にタバコを押し付けた。


好き?わたしが、芹生を?
常識人のくせに非常識で、自分勝手なのに酷く優しい、矛盾だらけの芹生のことを。

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