同居から始まる恋もある!?
「サーチ、大丈夫?ぼうっとしちゃって」
目の前で、美帆がパタパタと手を振る。ハッとして、大丈夫だと頷く。
美帆はやれやれと肩を竦めて、その真っ黒な瞳を細めた。
「ちゃんと教えてくれなかったのはムカつくけど……、サチは分かり易いからね。いいよ、私のことは気にしないで。芹生さんのことも、武君のこともサチが決めればいいんじゃないの?」
「……美帆、」
「その代わり、私もサチを気にしたりしないから。たとえサチが芹生さんのイトコで、芹生さんのことが好きだとしても。遠慮なし、ね。覚悟してちょうだい?」
醒めるようなウィンクをひとつ。
嘘も誤魔化しも、きっと彼女には通用しない。思わず目を見開くも、美帆の言葉に大きく頷いていた。
そんなやり取りの後、わたしたちはまるで何事もなかったかのように、近くにあるカフェで夏限定のフラペチーノを飲んだ。
他愛のない話の合間に、美帆は時折芹生の名前を口にする。
「ひとめぼれって、本当にあるのねぇ」
口端にクリームをくっつけながら、しみじみと呟くのに、なにも答えられない。