同居から始まる恋もある!?
恥ずかしいのと怒りに、じわりと目じりに涙が滲む。
なんで、どうして、いきなりこんな目に合わなきゃならないのだ。
「サチ、大丈夫か?」
「……武、ごめん。騒がしくなっちゃって」
「俺、帰る」
武は、真っ直ぐにわたしを見つめ、慰めるでも呆れるでもなく、いたって平然とした様子でそれだけを言った。
芹生の前に立って小さく頭を下げる。
「家族水入らずなのに、邪魔しちゃ悪いしな。また連絡するわ」
「えっ!武君、帰っちゃうの。俺、サチに会うのは本当に久しぶりだから、出来れば武君からもいろんな話聞きたかったのに」
あっけらかんとした芹生の言葉に武は苦笑いを浮かべながら、あっというまに部屋から出て行ってしまった。わたしは知っている。基本的に、真面目でストイックなタイプである武にとって、芹生のような人間は思いきり苦手なタイプなのだ。
なんのリアクションもないのが逆につらい。セックスも中途半端なところで終わってしまったし、武は明らかに気分を害していた。
悲しすぎて、わたしは思わずその場にへたり込んでしまった。
首筋のキスマークを押さえる。
芹生は、家族でもなんでもない、いわばただの親戚。いまどき親戚づきあいなんて希薄なものだし、わたしにとっては武のほうが何十倍も大切である。
「サチー、歯ブラシって余ってない?」
そんなところで、ひょこっと洗面所から顔を出した芹生に対し、沸々と怒りがこみ上げた。