同居から始まる恋もある!?


 誠東花火大会 8月21日 20:00~
 (雨天中止)


涼しげなフォントでシンプルに書かれる、地区の花火大会のお知らせだった。
確か、去年は大学のトモダチに誘われて缶チューハイを片手に花火を楽しんだっけ。


「ここからだと、ちょうどあっちのマンションの影で半分隠れちゃう」


カーテンを引いて、斜め前を指差した。


「そっかぁ。な、それじゃ、今から一緒にいかない?」

「……えっ」

「カキ氷に綿飴も買ってやるから。サチ、好きだろ」


大好きだけど……、ちらりと芹生を見上げれば、わたしの返答も待たずにいそいそと仕度を始めている。


「浴衣着たら?ほら、あの金魚の柄のやつ」

「それさ、一体いつの頃の話。大体、着付けなんてお母さんいないと出来ないから」


昔、実家にいたときは家族ぐるみでよく夏祭りを楽しんだ。
お気に入りの金魚の浴衣は、とっくに丈が短くなっている。


やっぱり、芹生のなかのわたしは相変わらず歳を重ねていないらしい。

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