同居から始まる恋もある!?
「何か心配してる?さすがに、サチの友達に手なんて出してないから心配するなよ」
「違う!わたしが言いたいのは、そんなことじゃない!」
思わず声を上げてしまった。芹生は、驚いて目を見開き、わたしを見つめる。
なぜ、何も教えてくれないんだろう。
なぜ、何も聞いてくれないんだろう。
わたしのマンションに来るまでの7年間、芹生がひとりで、何を思って生活してたのかとか、ともだちのこととか、どこで何をして働いているのかとか。
知らないことばかりで。
悔しい。
わたしは、ゆっくりと立ち上がった。
ぐるぐると渦巻く、真っ黒で醜い感情。吐き出してしまいたかった。
吐き出さずにはいられなかった。
「わたし、芹生のことお兄ちゃんだなんて、もう思ってないから」
後悔したって、遅いのだ。
芹生は、ほんとうに、ほんとうに一瞬だけ、酷く傷ついた顔をした。僅かだけど、決して見逃さない。けれどすぐにそれは、困ったような笑みで隠されてしまった。
ずっとホントの妹のように可愛がっていたわたしに、そんなことを言われたら、そりゃ傷つくよね。
けど、もう無理だ。
わたし、やっぱり芹生のこと、特別だ。それは、憧れだったカッコいいお兄ちゃんとか、そういうのじゃなくて。
泣くのは間違っている。泣きたいのは、芹生なのに。
けれど、ぽたぽたと落ちる涙を止める方法を知らない。
駄目ね。
芹生に吊り合うような、大人の女にはまだなれそうもない。