同居から始まる恋もある!?
「おーい、サチ?」なんて、聞こえないとでも思っているのか、無反応なわたしに対してことりと芹生は首を傾げてみせる。
さらりと揺れた艶のある髪。スッと通った鼻筋に、色白の肌。それに映える切れ長の二重から覗く、髪色と同じ真っ黒の瞳。あの頃からその美しさだけは少しも変わっていなかった。
それだけを確認して、わたしはつかつかと芹生に歩み寄り、一寸の躊躇いもなくその横っ面をパーンと平手打ちした。
「い、痛いっ!いきなりなにするんだよ、サチ!」
「わたしの掌だって痛いわ。芹生、あなた、いったいなんなの」
「なんなの…って」
唇が震えるほど激怒しているわたしの反応を、頬を抑えながら芹生がおどおどとした様子で伺う。
「きちんと、説明して」
「え?説明…?」
「そう、説明。わたしがきちんと納得できるように、説明してちょうだい。まずは正座して」
「いやあ、話せば長くなるし、そんなに面白い話でもないから……」
ぎろりと睨みつければ、芹生は言葉を飲み込んですごすごとリヴィングの真ん中に腰を下ろし、正座をした。