1ast present
後ろから口笛が聞こえた。
あたしは振り向く。
男は気づいてない…。
…まちがいない
と思った。
あの後ろからやってきている
10人くらいの、鉄パイプや
金属バットをかついでる人たちは
陸が呼んだんだって。
助けてやるから。
陸の言葉を思い出して、
あたしはドキッとした。
『早紀、あの単車のネオンが見える?
後ろには俺の呼んだ連れがいっぱい。
俺が合図したら、あのネオンに向かって走れ。』
「わ、わかった」
感じたことのない緊張感。
たかがナンパにあったくらいで
知り合ったばかりの顔も知らない女を
こうまでして助けてくれるなんて…
ふつうじゃ考えられない。
男の握ってるあたしの手は
汗で少し濡れていた。
信号が青になった―…
『走れ!!!』
あたしは男の手をふりほどいて
ネオンに向かって全力で走った。
後ろから、バタバタとたくさんの足音。
そのあとに
「誰に断ってあの子に手ぇだしてんだよ」
という言葉が聞こえたかと思うと
バコッと鈍い音が響きわたった。