1ast present

「げほげほっ…うっ」

あたしは座り込んで吐き出す。

胃がおかしくなりそう…
戻せば戻すほど気分が悪くなる。

やっぱ由佳とわかれてよかったな〜…
あの子心配性だから。


「はあ…はあ…」
「おい、おまえ大丈夫?」

「はあ…はあっ…え…?」

突然、あたしの背中をさする
大きな手。
聞き覚えのない声が後ろから優しく響いてきた。

「だ…いじょぶ…すぐ収ま…っう!!」
「さすっとるきん、全部だしな。俺しか居らんから平気やで」

何分も何分も
その大きな手は、あたしの背中を
さすってくれていた。

しばらくすると気分もだんだん良くなり、
吐き気は収まった。


あたしが落ち着いたのを確認したその人は、
「俺もう行くけど、帰りは連れでも呼びな」
とだけ言い残して
顔も見ないまま立ち去っていった。


「名前聞いとけばよかったな」


早足で去っていく後ろ姿を
目で追いながらつぶやく。


あたしの後ろには微かに
スカルプチャーの香りが残っていた。
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