君の隣
その日、彼女はいつもよりはしゃいでいた。
映画の後、食事をして、他愛もない話をしながら、街をうろつく。
「あ、そこの雑貨屋に寄っていい?」
そこは彼女が気に入って、よく立ち寄る雑貨屋だった。
店内に入ると、彼女は雑貨に夢中になる。
俺は邪魔にならないように、少し離れて、目につく物を手に取り眺めていた。
しばらくして、彼女を見ると、アクセサリーショーケースを見つめていた。
彼女の視線の先には、ネックレス。
じっと見つめて、買うか悩んでいる。
そんな彼女に愛しさを覚えて、
「…ネックレス?」
と、声を掛けた。
「うん、今日はいいや。また今度にする。レジに行って来るね。」
今日のところは諦めたらしい。
レジに行く彼女を見送り、ネックレスに目をやる。
このくらいの値段なら、買えない事もない。
直ぐに買ってしまおうかと思っていると、会計を済ませた彼女が戻ってきたので、タイミングが掴めず、結局、そのまま店を出た。
時計を見ると17時過ぎていて、そろそろ、彼女は帰る時間。
「じゃぁ、私、そろそろ帰る。…あ、傘!」
駅に向かって歩き出していた時に、彼女は傘を先程の店に忘れてきた事を思い出したらしい。
「俺、すぐに取って来るから、ここで待ってて。」
そう言って、俺は彼女をその場に残し、店に向かって走り出した。