君の隣
ベンチに並んで座り、全力で走った俺の手には、公園に入る前に自販機で買ったジュース。
「俺、久々に全力疾走したよ。ふぅ…でも、すぐバテて、ダメだなー。」
「ふふ…早かったよ。あっという間だった。」
クスクスと笑う彼女を見る。
…どうする?
彼女の気持ちを聞く?自分の気持ちを伝える?ネックレスを渡す?
今はまだ、彼女が楽しそうにする雰囲気を壊したくない。
先にネックレスを渡すか。
俺はジュースを一口飲んで、口を開く。
「あのさ、…実は」
「分かってる。大丈夫だよ。今日は楽しかった。今までありがとう。」
彼女が、俯いたままで焦ったように俺の言葉を遮る。いつも彼女らしくない。
−でも。やっぱり。俺の予感は当たっていた。
彼女は、今日俺から別れ話を切り出されると思っていたのだろう。
検討違いも甚だしい。
俺の想いは、そんなに軽くない。彼女を思う気持ちが全く伝わっていない事に少しムカついて、
「今日で最後って?つまり別れたいって事?」
ため息混じりで、自分でも思いがけず、低めの声が出る。
それでも今が、きちんと彼女の気持ちを聞くチャンス。
冷静になれ、と自分に言い聞かせる。
「それで…俺と別れたい理由は何?」
俯き、黙ったままの彼女に、問い掛ける。
それでも何も言わない彼女に新たな不安が生まれる。
まさか、彼女は俺が別れたいと思い込んでるのではなくて、彼女自身が別れたいと思っている…?
絶望的な事が脳裏を過ぎる。
そんな俺に彼女が視線を足元にやったまま、重い口を開いた。
「あなたが別れたいって言ったから…でしょう?」
正直、ホッとした。
彼女から別れを告げられるのかと考えたら、頭が真っ白になった。
俺の顔は、青ざめてるかもしれない。
「いつ?…俺が別れたいって言った事あった?」
まぁ、今回誘う時に追い詰めるような言葉を選んだけど…。
彼女はまた、黙り込み、自分の中で考えて、解決法を探しているようだった。