きみといつまでもいたい


「もういい、セイヤ、行くぞ!」


樹が促す声も聖夜の耳には届かない。

彼にはもう、目に映る世界が地獄にしか見えなかったのだ。


「死ななきゃいけないのは、俺のほうだ。

俺なんか生きていても、ミルクを苦しめるだけだ……」


「セイヤ!」


走り出した聖夜を樹は必死に追った。

不自由な身体とはいえ、捨て身の聖夜の動きは素早かった。

非常階段の手前、やっと追いついた樹は、聖夜のミゾオチに一撃を入れた。


崩れ落ちる聖夜。


樹はその身体を担ぎ上げると、非常階段を使い、急ぎその場を後にした。

二人の若い命を無駄に散らせるわけにはいかない。

美留久には家族がついている。

聖夜には、聖夜を守れるのは自分しかいないのだと、樹は己に言い聞かせていた。


――ここから離れなければ!


――聖夜の心が壊れる前に!


樹は決断を後回しにしてきた自分を責めていた。
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