きみといつまでもいたい
「古谷さん、こういう大事故で生き残った者は、一時的に、自分一人が生き残った罪悪感を感じることが確かにあります。
だが、聖夜くんの場合は事故の後、確かに生きる目的をもって再起している。
彼の傍には、一郷美留久という良き支えがいて、彼女の存在が彼の生きる意味だったと、古谷さん、あなたはおっしゃいました。
彼が彼女を遠ざけようとした今、心を閉ざす理由は、もしかしたら別のところにあるのではないでしょうか?」
「そうかもしれません。
だが、それを知る手立てが僕にはない。
僕の知りうる情報の中には、甥を今の闇から救う糸口が見つからない。
だから、僕はあなたの助けを借りるためにここにいるんだ」
樹はカナダに来てからの聖夜の落ち着いた暮らしぶりに安堵しつつも、一向に言葉を発そうとしない聖夜に苛立ちさえ覚えていた。
彼は藁をも掴む気持ちでここに居る。
そのことをジャックに理解して貰わなければならなかった。