きみといつまでもいたい

「古谷さん。恐らく、聖夜くんは失語症ではない。

僕は、彼が外界との接触を自ら絶つために、言葉を発しないだけだと思っています。

ここはひとつ、催眠療法を試してみては如何でしょうか?」


「催眠療法?」


「自分でも気付かない、あるいは、あえて気付こうとしなかった心の奥深くに残った思い出やこだわりを掘り起こすことができるかもしれません」


「それで聖夜が苦しみから解放されるのなら……」


「解放されるかどうかは、聖夜くんがその苦しみを乗り越えられるかどうかにかかっています。

そうできるよう、回りが支えて行く覚悟が必要です」


「わかっています。僕がここにいるのは、そのためなのですから」


樹は、その決意を示すため大きく頷いた。
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