きみといつまでもいたい


『セイ、聞こえる?

あたし上手になったでしょ。

セイ、あたし、セイが大好きだよ』


ピアノの音は、聖夜の耳にそう伝えているように聞えた。

日に日に上達するピアノの調べに乗せて、美留久の気持ちも育っていった。

二人は静かに愛を育てていったのだ。


ある日、聖夜は思い切って美留久に自分の気持ちを伝えることにした。


「美留久、僕ね、美留久が好き。ずっと好き。とっても好き」


ただ、好きの気持ちを伝えたかった。


「なぁんだ、セイも? 良かった。あたしも好き。セイが好き。大好き」


美留久は笑って、そう答えた。


そんなこと、わかり切ったことだった。

聖夜はそっと、美留久の頬にキスをした。


二人の始めてのキスはほんのり汗の味。

いつまでも続くはずだった、大好きの気持ち。



それは、聖夜の大切な幸せの記憶。
< 25 / 242 >

この作品をシェア

pagetop