きみといつまでもいたい




「聖夜くん、聞こえる? 頭の包帯を取りますよ」





聖夜は突然かけられた大声で目を覚ました。


いや、

これは突然、のことではないのかもしれない。

毎日の回診での単なる処置なのだ。


美留久から、聖夜の意識が一度覚醒したことを聞かされた医師達は、回診や処置の際、必ず彼に声かけをするように心がけていた。

いつなんどき、彼が覚醒するか分からない。

その瞬間を見逃さぬよう、細心の配慮が為されていたのだ。


ベッドの背に当る箇所が徐々に高くなり、聖夜の姿勢が持ち上がった。

頭に手が添えられて、どうやら看護士が聖夜の包帯を解きにかかったようだ。


顔に少し風が当たる。

閉じられた瞼が僅かだが明るくなった。


光だ。


聖夜は思い切って、目を開いた。

そこには、ぼんやりとした景色が広がっていた。

白い背景の中に、僅かな色をもった物体が影をおとしながら動いていた。



「見える、けど、がっかりだ。ミルクがいない」



その声に包帯を代えていた看護士が驚いた。



「聖夜くん? 今しゃべったの、聖夜くんなの?」



「ミルクに会いたい……」



そう呟くと、聖夜はまた目を閉じた。



聖夜にとって、美留久のいない世界など見るに値しなかった。
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