きみといつまでもいたい



あの日、樹は古谷家を訪れて、駐車場に車がないことに気がついた。



日曜の昼は、たいてい遅い昼食を、兄家族と一緒にとるのが常だった。

上手くすれば、大樹の朝食に焼いたクロワッサンにありつけることもあったのだ。


(そうだ、忘れてた。今日は美留久ちゃんのコンクールの日だったな)


隣りの一郷家を見上げてみても、人の気配がしない。

みんな公会堂に集まっているに違いなかった。


(俺も行ってみるか……)


樹は車を止めた駐車場に戻り、ふとそこにできた大きな染みに気がついた。


(これは……)


樹の頭に不安が過ぎった。それはもう、確信に近い不安が。


(どうか無事で……)


樹は車に飛び乗ると、公会堂目指し急いだ。
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