きみといつまでもいたい
「ほら、午後のリハビリ、行く時間でしょ。
もう少しで学校にも行けるんだし、頑張ろう」
布団を無造作に剥ぎ取ると、美留久は松葉杖を聖夜の前に差し出した。
聖夜はそれを脇の下に挟み、足を床にに下ろして立ち上がる。
その背はこの一年で随分と伸びていた。
聖夜の身体の成長が、怪我の回復を早めたのは事実だった。
複雑骨折した骨がここまで早く結合できたのは、彼が成長期にあったことが幸いしたのだ。
大人だったら、こうは上手くは行かなかっただろう。
「この杖が無くならなきゃ、学校には行かない」
難しい顔をして聖夜が呟いた。
こんなやり取りは毎日のことだ。
美留久は少しだけうんざりした様子で口を開いた。
「じゃ、あたしの肩に摑まって行く?」
「そんなの……、もっと惨めだ……」
「あら、あたしは嬉しいけどな。
聖夜が一緒に学校に行ってくれるなら」
本当は、既に通学許可は主治医から出ているのだ。
走ったり飛んだり、体育の授業は無理としても、松葉杖で歩けるようになった今、日常生活にさして支障は無くなった。
だが、それを拒んでいるのは聖夜だった。