先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
僕が欲しいのはヤケを起して荒れている宮澤さんじゃない、いつも食事を作ってくれて作品に対して厳しい意見を何の遠慮無く言ってくれるいつもの宮澤さんだ。


そう伝えたかったのに、柔らかい体がベッドカバーの中へ侵入して背中へ貼り付く。


「男ならしろよ」
「嫌です」
「何故? 」
「僕は……僕は……」


ここは上手く切り抜けるしかない、何とかこの妖しい空気をブチ壊す言葉か態度をヒネり出さなければ。


作家なのに、こんな状況でパニックするなんて。


「神崎」


耳元へ熱い吐息を感じ、反応しそうになるのを必死に抑える。


「み、宮澤さんっ」


背中から回された腕が浴衣の胸元へ侵入し、素肌に触れる。


「ダメです、僕、実は……あの」


首筋へ形のいい唇が当てられ、湿った感触がする。
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