先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
言葉でそれを伝える代わりに体を抱きしめて、二度と離さないとばかりに強く力を込めたものの、股間に一撃を食らってその場へ崩れ落ちる情けない僕。


「勘違いするな! これは仕事の話だ」
「嘘吐かないで下さいっ、じゃあ何であなたにはって言ったんですか? 」
「お前には関係の無い話だろ、それじゃあな! 」


カツンカツンと激しい音を立ててエントランスから消えて行く後姿をうずくまったまま見送った後、1人夜の街へ飛び出した。


好きな人が新しい恋人の居る相手と、してはいけない事をしようとしている、そのシーンを妄想したくないから。


1人の部屋で耐えるには重過ぎる痛みを抱えたままたどり着いたのは、新宿二丁目。


宮澤さんに連れられて来たバー『pinkish』。


「あら、今夜は1人なの? 」
「はい」


クミさんに促されてカウンターへ座り、飲めない酒をチビチビと口へ運んでいると横にぬくもりを感じた。
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