先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
深い溜息を吐いて席を立ち、動き始めたばかりの地下鉄へ乗ってマンションへ戻る。


地中深いトンネルの中、窓ガラスの外は暗闇。


映る顔は生気を失い、空ろな目をしている僕。


そして自分の住む街へ差し掛かろうとした瞬間、トンネルを抜けて一気に光が差し込む。


余りの眩しさに目を閉じてやり過ごそうとしたが、涙がこぼれそうになり慌てて目を見開くと、そこには宮澤さんの姿があった。


「神崎、どこへ行ってた? 」


地下鉄の心地よい揺れで眠り込んだ後の夢かと思ったけれど、胸倉をガバッと掴まれて夢じゃないと気付く。


「降りろ! 」
「はいっ! 」


どうしてこんな時間にこんな所でと疑問が残るが、それに従い地下鉄を降りてホームのベンチに座る。
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