先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「あの、どうしてここに居るんですか? 」


もしかしたら原さんの部屋で愛し合った帰りに偶然出会っただけかも知れない、いいや、さっき『神崎、どこへ行ってた? 』と聞いたから、僕を探していたのか……。


酔いのせいで上手く回らない頭から出たトボケた言葉に対し、目の前で仁王立ちになっている宮澤さんは


「あの後、宣伝もしないで一人前に遊び狂いやがって! だから探してたんだよ! 」


と再び僕の胸倉を掴んでユサユサ揺らす。


ああ仕事の為か、心配して探してくれていたんじゃないのか。


やっぱり僕はただの下僕、そしてこの人は支配する女王様。


目が覚めたような気がして、宮澤さんの腕の中へ自分の両腕を突っ込み、ガバっと広げて胸倉から手を離すとそのまま駅の改札へ向かう。


さようなら、宮澤さん。


僕が思う程にあなたは僕を思ってくれていない、それに気付いたから。

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