先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
傷心を抱えたまま再び1人へ戻り、駅前の大きな交差点を渡って自分の住むマンションへと歩く。


宮澤さんは後を追って来ない、そう理解はしているものの追って来て欲しい気持ちがまだみじめな胸の中にほんの少しだけ存在し、何度も後ろを振り返る。


だけどあの気高い姿なんかどこにも見えなくて、時折ジョギングの外国人が暑苦しい顔で側を駆け抜けるだけ。


恋をしてはいけない相手に恋をした結末は、裕実を失った時よりも重く感じられた。


明け方の街をやっとの思いで歩き続け、自分の部屋のドアを開け、崩れるように玄関へ倒れ込む。


今日はこのままここで眠ろう、まだ残る作品の更新や宣伝なんかどうでもいい。


もう僕は小説を書かない、いや書けないから。


自分がこんなに不幸なのに、他人の幸せな話なんてとてもじゃないけど。
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