先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
それに僕はあんなに不幸な過去を持つ彼女を原さんのような優秀さで惹き付けたりは出来ない、ただ命令されるがままのダメ小説家。


きっと夕べは原さんの腕の中で過ごし、今朝になって出世の糸口である僕が何もしていないのに気付き、捜索しただけ。


この僕を道具のように扱うあいつらなんか不幸になってしまえ、浮気がバレて制裁を受けろ、宮澤さんなんか一生不幸なままで居ればいいんだ。


呪うような言葉ばかりが胸へ浮かぶけれど、口からは出て来ない。


その代わりに目からボタン……ボタンと大粒の滴が、冷たい床に向けて落ちるだけ。


部屋に朝日が差し込み、それが真昼の白い光に変わる頃になっても僕はただそこで動けず、眠れずに時を過ごす。


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