先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
僕がこのマンションを購入したのは大学入学を果たした直後の6月、だからサークルの申込書には実家の住所を書いていたのだ。


『亘理君、来れそう? 』


甘えるような裕実特有の声で問い掛けられて、僕はうっかり


「え、ああ」


と答えてしまう。


『良かったぁー』


何が良かったのだろう? もう二度と会いたくない裕実と会わなくてはいけないのに。


女は理解不能だと思いつつも、当日、二次会の会場である銀座のヌーベルシノワレストランを訪れてみれば、肩から背中にかけてかなり露出をしたホルターネックドレス姿の裕実を見つけた。


「あ、亘理君! 」
「久しぶり、元気そうだね」
「おかげさまで」


もうお金の出ない僕というお財布を捨てて、いくらでもお金を出してくれる新しいお財布を見つけたのだからこの言葉にも頷ける。
< 126 / 183 >

この作品をシェア

pagetop