先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
始まった二次会は座席が指定されており、石崎先輩の妙な気遣いで僕の席が裕実の横になっていた。


「こうして並んで座るのも久しぶりねー」


付き合っていた頃はいつも横に座っていた、でも別れ話のテーブルでは向かい合って……。


「そうだね、久しぶりだ」


もう忘れようとしていたのに、横顔やむき出しの白い肌、そして鼻をくすぐる甘ったるい香水が過去を呼び覚ます。


宮澤さんにフラれた今、心はグラグラと揺れて行き、どうにかして裕実と元サヤに戻れないだろうかと愚かな考えに捕らわれる。


だが今の僕には何も無い、お金も才能も。


増してや先日までライバル視していた裕実に対して、そんなさもしい感情を抱くなんて。


頭を何度も振ってそれを打ち消し、飲みに飲むしかないと何度もグラスを傾ける。
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