先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「亘理君、あのね……」


皆が店を出た後、2人きりになった瞬間、裕実が僕の耳元で囁く。


「もう知ってると思うけど、私、yumi☆なの」
「うん、知ってるよ」


だから何だ? お前の書いた下らない官能小説もどきの本なんか買わないぞ、大体何だ?
あのベッドシーンは。


毎回毎回同じセリフと行動ばかりで違うのはシチュエーションだけ、あんなの読んでも興奮すらしない。


男ってのは繊細なんだ、もっと緻密にそして密やかに表現されてなきゃ興奮なんかしないんだ。


大体、男が皆オープンなH好きなんてまず有り得ない設定だぞ。


人に隠れてコソコソ見たい・読みたいからスポーツ新聞のど真ん中にそういう記事が掲載されているワケだし、そういう本だって大体本屋じゃ奥のコーナーに置かれているだろ。


まるで宮澤さんが乗り移ったかのような言葉が頭の中へ浮かぶが、口から出ないのはこの吐き気のせいだ。
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