先生、男と女になれません。 －オトナの恋事情ー

携帯を手に取って電話をしようとアドレス帳を開くけれど、発信ボタンが押せない。


向こうからの連絡が無いのはきっと編集長からあの書き込みの件を詰問され、責められた後に僕と賞が終わるまでは一線を引こうと思っているからじゃないのか？


激しいストレスから来る苦痛と絶望に苛まれ、何度も携帯を手に取っては戻す。


声が聞きたい、あの強い言葉で今のダメな僕を厳しく叱って欲しい。


そう願っているのに、どうして自分から電話出来ないんだろうか。


元々勇気なんか無い人間だから、あんな書き込みを真に受けて……。


涙が出て来る、情けない自分に対して。


いつの間にかデスクの上へ伏せり、僕は眠り込んでいた。