先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
とにかく立ち話も何だからと2人を部屋へ案内し、紅茶を淹れて出した後、ソファの向かい側へ腰を下ろした。


「あの、今日は何でこちらへ」
「じょ……いえ宮澤さんに頼まれましてね、暫くこちらには伺えないのでキッチリ見張るようにと」


今、女王様と言おうとしたんだろう、日之出さんは。


しかし少年漫画誌の編集は普通以上に忙しいのに、その合間を縫って見張りに来いなんて無理難題を……。


「だから私も付いて来ちゃったんです、お邪魔してごめんなさい。でも、どうしても結末が知りたくて」


自分達の恋がモチーフになっている以上、気になるのだろう。


「小鳥と来たら神崎先生の作品にもう夢中で、この間なんか危うく連載を落とす所だったんですよ」
「だって気になっちゃうんだもん」
「すみません、僕が至らないばかりに」
「だから先生、書いて下さい。じゃなきゃ私、次は完全に落としちゃうかも」


僕なんかより多い愛読者を抱え、待ち望まれている彼女の連載を落とす訳には行かない。


そうは思ったけれど、どうしても進まない。


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