先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
でも僕はもうそれでオドオドしたりはしな……ビシィッ!


「ヒ、ヒィィ」
「さっさと座れ! 」


会社設立当時、銀行に少しでもいい印象を与えようとパンツスーツではなくタイトスカートを履くようになった加瑚、そこから伸びるしなやかな足に見とれてしまったせいで二度目のムチ音を立てられる。


全く強引なんだからと思ってはみたものの、自分の遅筆が原因で怒らせているので急いで椅子へ座り、キーを叩く。


今、書いているのは女編集者と小説家の恋愛物語。


勿論最後はハッピーエンドなのだけれど、最後のもう一山が描けない。


プロットや登場人物を書いたノートを眺め、腕を組んで考え込む。


やっぱりここはヒロインの元彼であるあくどい男編集者を登場させ、ひと騒動起こさせるしか……。


んー、いい匂いがして来た。


今日は特製肉じゃがかな、それとも最近覚えたボルシチかも知れない。
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