先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「いいだろ、お前はショートケーキのイチゴなんだから」


ここまで書いた時点でバスコーンと派手な音と共に後頭部へ激しい衝撃を感じて、思わずデスクの前の腰痛対策椅子から転げ落ちる。


何でこんな目に遭わなきゃいけないんだろう、僕が……と思いながらも視線を上げると真っ黒なパンツスーツの上に存在する夜叉のような顔が見え、その恐ろしさに首をすくめた。


今日の凶器は来客用のゴブラン織りのスリッパか、と頭をさすりながらやっとの思いで立ち上がると再び椅子へ体を押し付けられる。


見た目は万人が認める美人だけれど、中身は乱暴でガサツで食い意地の張った編集者、宮澤 加瑚に。


「テメェ、ケー小ってのを何だと思ってんだよ」
「スィーツ(笑 です」
「だからちっともいいのが書けないだろうが! おら、コレ見てみろ! 」


僕の脇から手を伸ばしてカチッとネットへ接続し、カチャカチャとマシンガンの如くサイト名を打ち込み『ベリーラブ人気ランキング1位』の作品をガンッとクリック。
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