先生、男と女になれません。 －オトナの恋事情ー

「お客様、申し訳ございませんが他のお客様のご迷惑になりますので、今日のお食事代は全て無料に致しますのでご退店願えませんか？　」


その言葉を聞いた瞬間、パァァーッと顔を輝かせてイソイソ席を立つ。


きっと出版社も景気が悪いから、今回のような食事代を領収書で落とせないだろうと思っていた矢先にこの申し出を受けたものだから……。


「神崎、何ノロノロしてんだよ、行くぞ！　」
「は、はいっ！　」


現金・ワガママ・横暴の三拍子揃ったこの性格は、一体どういう育ち方をすれば身に付くのだろうと連れて来られた２軒目のバーで深く溜息を吐いていると、宮澤さんがさっきの話の続きを始める。


「携帯のフィルタリング（未成年者に取って有害なサイトには接続出来ないようにする契約）が始まった時点で、ケー小の未来はあんまり明るくないと思った。何せ、これまでがヒドかったからな」
「未成年者の妊娠とか性的暴力とか過剰な表現がある作品がウケてましたからね」
「それは多分、今の荒んだ世の中を反映してるんだろうよ。景気は悪い、政治はおかしい、大人だって」


こうした事をきちんと考えてるなんて意外過ぎて、まじまじと顔を見詰めると目が据わっているのに気付く。