先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「そこで小芝居してる余裕があるのなら早く開けろ! 」


バターン! と派手な音を立ててドアが開き、中から登場した悪魔に腕を引きずられる。


「お願いですからっ! 命だけは! 」
「はぁ? 何を言ってるんだ? 殺す訳無いだろう、あたしの育成モットーは生かさず殺さずだからな」


生かさず殺さずって、僕は悪代官に搾取される江戸時代の農民ですか?


そう言いかけた瞬間、いい匂いが鼻先へ届く。


これは食事の匂いだと引きずり込まれたリビングのテーブルの上を確認すると、そこには美味しそうな料理が並べられていた。


「こ、これは? 」
「喜べ、あたしの手料理だ」
「なんで食事を作ってくれるんですか? 」
「決まってるだろ、外食は経費じゃ落ちないからだ」


でも材料費はどうなるんだろう、この場合。
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