先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「これを飲め、というか飲ませろ」
「わかりました、じゃあグラスを」


しょうがない、取っておきのカラバのグラスを出そうと食器棚の扉を開けるとペアのアイングラスが目に入る。


これは裕実と買った物、というか


『このグラスでシャトーマンゴーの85年物が飲みたーい』


とおねだりされて買わされた物。


あの時の思い出の品なんてこれ位しか残っていない、写真や残りそうな物は全て処分したから。


「そのグラス、いいな」
「え……でもこれは」
「いいからそれを出せ」
「は、はい」


絶対に宮澤さんに割られてしまう、と脅えながらもグラスを差し出してみれば三杯目の焼酎を注ぐ時にカシャーンと音がした。





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