先生、男と女になれません。 －オトナの恋事情ー

でも先生は自分の話に夢中で気付かない様子、僕も僕でまたどうせ宮澤さんが下僕の１人を調教しているのだろうと気にも留めなかった。


そして全てを聞き終え、ありがとうございましたと深く頭を下げた頃、いつにも増して妖しい魅力を湛えた宮澤さんと髪の毛をグシャグシャに乱したお兄さんが戻って来る。


「終わった？　神埼君」
「ええ、本当にアレコレ伺えて参考になりました」
「私でよければいつでも……お兄ちゃん？　どうしたの？　その髪の毛」
「う、ううん何でもないよ小鳥」


この可愛くて純真な妹には言えないだろう、さっきまでビシビシあの乗馬用ムチで叩かれ放題に叩かれていたなんて。


日之出さんと立場が同じ者同士、一度視線を合わせてうんと頷くとソファを立って玄関へ向かおうとしたら、先生が一度自分の部屋へ戻り、何かを持って僕の元へ駆け寄る。


「あの、神崎先生」
「はい」
「私、富士宮　夜貴子シリーズのファンだったんです。もし良かったら、この本にサインしていただけませんか？　」


意外だった、こんな超売れっ子マンガ家が僕のファンだったなんて。