先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
何年ぶりかにサインをし、本を先生へ戻すと様子を見ていた宮澤さんがニヤッと笑うのが見えた。


「神崎先生、またああいう作品お待ちしてますね」
「ありがとうございます、先生にそう言っていただけて光栄です」
「そんなぁ、恥ずかしい」


こっちが恥ずかしい、夕べ読んだマンガは僕のかつての作品なんかより遥かにデキがいい内容なのだから。


最後に少し気分が良くなり、お礼を言って先生の家を後にした帰り道。


「宮澤さん、僕達が話をしている間に日之出さんと何をしてたんですか? 」


間違いなく調教だとは思うけれど、一応念の為に聞いてみれば


「ちょっとしたお遊びだ、あいつからおねだりされたから」


顔色1つ変えずに平然と答えられて、背筋が寒くなる。


僕もいつかはこれに慣れて、おねだりなんかしてしまうようになるのだろうか。


いや、それは絶対に無い。


至ってノーマルだし、そのケなんか無いのだから。


でも……。
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