先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「それじゃあ、この後打ち合わせがあるんで失礼するよ。宮澤、頑張ってな」
「はい、ありがとうございます」


マンションのエントランスから原さんの姿が消えた、と同時にスーパーの袋と自分のバッグを僕に向けてガバッと差し出す。


「気が利かねぇなあ、お前は! 女にこんな重い物を持たせるんじゃねぇよ」
「すみませんっ」


2つを受け取ると10キロはあろうかという重さで、つい僕がフラついているといつの間にか手にしていた乗馬用ムチでビシッと足を叩かれる。


「痛いっ! 」
「ちゃっちゃと歩け、ほれ! 」
「ひぃっ」


こうして奴隷のように部屋まで荷物を運び終えると、今度は尋問タイムの始まり。


「原と何を話していた? 」
「え……」
「困るんだよ! お前、ラノベで賞を取った時の契約を忘れたのか? 淀川の専属になるっていう契約を! 」


そう、僕は新人賞を受賞した後、淀川書店と専属契約を結んでいた。
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