先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「宮澤さん、僕を否定しないで下さいっ! いつもいつも傷つくような事ばかり一方的に言われてどれだけ辛い思いをしているかあなたには分からないでしょう! 」


だが、宮澤さんは驚くどころか腕組みをして尚も挑戦的な言葉を吐く。


「だったらテメェの力で立ち直れよ、あんな落書きごときで落ち込んで自分の作品のクオリティを落として、挙句に尻切れトンボで強制終了させられるなんて情けねぇ! そんなんだからあのyumi☆にも捨てられるんじゃねぇのか? 」


それに対して反論は出来なかった、自分の力で何とかしなきゃいけないのに何も出来ていないから。


俯く僕に向かい、宮澤さんはバッグの中から真っ赤な太いローソクを取り出してライターで火を点ける。


話している間、もう夕日はとっくに落ちてしまい、真っ暗な部屋の中でそれは妖しげな光を湛えていた。


「神崎、こっちに来い! 」
「は? 」
「そこへあぐらをかいて座れ」


床へ体を押し付けられてあぐらをかかせると、宮澤さんは灰皿の上へローソクを立てて目の前へ置く。
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