先生、男と女になれません。 －オトナの恋事情ー

カウンターへ並んで座れば、キープしてあるボトルと氷、ミネラルウォーターの3点セットがすぐに置かれた。


宮澤さんはここの常連客らしく、慣れた様子でクミさんが作ってくれた水割りをあおり、煙草の煙をプカーッと吐き出す。


僕はその横でチビチビと慣れない水割りを少しずつ飲むだけで、特に会話は無い。


そんな空気を察したクミさんが、楽しそうに話しかけてくれる。


「カコちゃんとどういうご関係なの？　」
「仕事上の付き合いです」
「それだけじゃないでしょ、下僕ってカコちゃんが言うからには親しい筈よ」
「クミちゃん！　」


下僕という称号は親しい人間にしか使わない？　いや、親しければもっとマトモな称号を与えるはずだが。


「それにしても可愛いコねー、年はいくつ？　お仕事は？　」


どうやらクミさんに気に入られたらしく、次々と質問を浴びせられた。


「年は２５歳で、仕事は一応小説家です」
「小説家なのぉ！　キャー凄いじゃない」


小説家と言ったって、今や落ちぶれているけれど……。