先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
「とにかく思い出が多すぎるんです」
「なるほどなぁ、それなら明日、付き合ってやろう」
「え? 」
「明日は土曜日で仕事が休みだ、だからロケハンに行く」


いいのかなぁ、こんなに良くしてくれてなんて思ってはみたものの、宮澤さんの事だからきっと何か含みがあるのだろう。


でもロケハンとは言いつつもこれはある意味デートだとバカな僕はすぐに頭を切り替え、賛成し、次の日の朝。


黒のジャケットに昔、セレクトショップで買ったTシャツとデニムを身につけてほんの少しオシャレをしてから待ち合わせ場所である駅へ向かってみれば、誰かの罵声が聞こえて来た。


「お前と付き合ってる時間は無い! 」
「いいから来てよ」
「冗談じゃない、あっちへ行けっ! シッシッ! 」


一体何の騒ぎだろうと通り過ぎるフリをして見てみれば、黒のハットを被り、同じく黒のロングベストにカーキ色のクロップドパンツを履いた宮澤さんと金髪のヤンキーっぽい男が言い争っているのが目に入る。
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