先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
2人の間へ割って入り、力を込めて宮澤さんの腕から男の腕を離すとそのまま手を繋いで走り出す。


向かうは駅の改札、ここさえ潜り抜けてホームへ駆け下りれば何とかなると思ったから。


「テメェェェーッ! 」


猛スピードで追い掛けて来る男に肩を掴まれそうになったけれど、宮澤さんがひじ打ち一発を素早く顔に与える。


こんなにアグレッシブに戦えるのなら、何もあそこまでもみ合う必要は無かっただろう。


だが、一会社員として公の場で戦う訳にも行かないからと遠慮をして……。


「4番線、ドアが閉まります」


手を繋いだまま閉まり掛けたドアへ滑り込み、電車の床へ崩れ落ちる。


「逃げ切りましたね……」
「ああ」


お前のお陰だという一言を聞きたかったけれど、それも無いまま息が整うまで床へ座り込んだまま。
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