先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
確かにこの状態でタクシーへ乗せたとしても、帰る途中に騒ぎを起すかも知れない。


だったらここで1泊、でも相手は一応女で、おまけに僕が儚い思いを寄せていて。


「あの、その」
「ご宿泊のお手続きでしたら、こちらでも承りますので」


穏やかに促されたもののその顔が


『ここへ置いてお前だけ帰るなよ』


と言っているように見え、仕方なく僕はその場で宿泊手続きをした。


たまたま部屋が1つ空いていたから良かったけれど、空いていなかったらどうすればよかったんだと案内されたダブルの部屋の窓から見える夜景を見ながらまた溜息を吐く。


その後ろでは宮澤さんが仰向けになり、大の字でベッドへ広がっている。


「んが……」


おまけにイビキまで。
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