先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
ここへ置いて帰るにしても、宿泊代とタクシー代を払うハメになるので観念して僕も泊まるしかない。


そう決めて、着ていたジャケットを脱いでバスルームへ向かう。


寝る前には風呂へ入らなければ気持ち悪い体質だし、それにもしも何かあった場合、まあそれなりに対応が出来るようにという下心もほんの少し。


シャワーを浴び終えて恐る恐るタオル1枚で部屋へ戻ってみれば、宮澤さんはさっきと同じ大の字のまま。


良かった、目を覚まさないで。


浴衣を着てもう1つのベッドの端へ座り、その寝顔を見詰める。


酔っ払っているせいか目元をほんのりと赤くさせ、口元も緩んでほんの少し開いていて……まるで僕を誘っているかのように見えた。


しかし手を出したら最後、ココで殺人事件が発生してもおかしくない。


今にも手を伸ばしそうになる衝動を抑え、スッとベッドカバーに身を入れると目を閉じる。
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