大好き‥だよ。
『楽しいですよ、体育の次くらいに。先輩は楽しくないんですか?』

その瞬間、この質問をしなきゃ良かったと後悔した。人の顔色ってこんなに変化するんだ‥先輩の顔の色が、赤から青に変わっていった。

『堀内の授業は、はっきり言って地獄だよ』

『そ、そうなんですか‥』

こっちを見る余裕もないようだった。
一部始終を見ていた何人かの先輩も教室から出てきた。軽く頭を下げると、私たちの視線を気にすることなく、真面目な顔で言った。

『そろそろ教室に入らね?』

『あっ、あぁ‥。
2人も教室に戻って良いよ。次の授業始まっちゃうし。呼び止めてごめんな?』

『いいえ。じゃあ、失礼します』

もう一度軽く頭を下げて、5年生の教室の前を通って教室に戻った。

あの日以来、5年生の教室の前を堂々と通れるようになった。というか、パソコン室から笑顔で出てくると、先輩達の方が教室に戻っていった。

”楽しいですよ”

あの一言が効いたのかな?
堀内先生がどんな授業をしているのか、その疑問だけが残った。


それから何回かパソコンの授業があった。最近はワードソフトを起動させ、文字を打つ練習が始まった。私の家にはパソコンが無いので、家で練習することが出来ない。だから、この時間に文字の配列を覚えようと、必死になっていた。

『よし!じゃあ一旦キーボードから手を離せ』

指示を受けキーボードから手を離し、先生を見た。

『個人差はあるが、だいぶ文字を打つことに慣れてきたから、今日はメール交換をしようと思う』

『メール交換?』

『あぁ。もちろん学校のパソコンは特殊構造になっているから、家に送ったりは出来ないけどな』

『じゃあ、何処に送るの?』

『学校のパソコンにだよ(笑)』

学校のパソコンに?
それって、私が送ったメールが私に届くのかな?

メール機能を使ったことが無い私にとっては、ちんぷんかんぷんな話だった。
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