大好き‥だよ。
『‥以上でホームルームを終わりにする。よし、じゃあ掃除するぞ』

先生の掛け声と共に全員が立ち上がり、椅子を逆さにして机の上に置いた。

『ねぇ、結さんは陸上の件どうする?』

『ん~‥考え中』

そう言って、机を持ち上げて教室の後ろに運んだ。

『悠君は?』

机の横に立って待っていると、悠君も机を持ち上げて後ろに運んできた。

『俺はパス‥かな』

『何で?』

『放課後はクラスの連中と遊びたいし。結さんもそうすれば?』

『ん~‥』

両手を前で組んで考えていると、悠君はそれ以上何も聞いてこなかった。机を引きずる音と、楽しそうな笑い声が微かに聞こえてきた。

全員が机を後ろに運び終わった頃、ふと我に返ると机に囲まれていて出られない状況だった。

『えっ、何で?』

すると、ほうきを持った和樹君が笑いながら言った。

『だって桜井、全然気付かねぇ~んだもん。だから桜井の列の奴らがグルになって、包囲してた(笑)お前は完全に‥』

和樹君の言葉を無視して、後ろの扉から悠々と廊下に出て脱出した。「嘘だろ?お~い!」教室の中から今にも泣きそうな声が聞こえてきた。

ふふふ‥

口元を右手で押さえて笑っていると、教室の前の扉から華代が出てきた。

『華代~
今の見てた?みんなグルになって酷いと思わない?でも、後ろに追い込んでもあれじゃあね(笑)誰だって扉の存在に気付くって‥‥って、どうかしたの?華代‥』

一緒に笑ってくれると思ったのに、眉間にシワを寄せて私を見ていた。

『はぁ~‥』

大きなため息をついた後、耳元で囁いた。

『俊君、さっきも見てたよ』

『嘘!?』

『嘘なんかついてどうするの。いいの?』

『いいのって聞かれても‥』

壁に寄りかかってそのまま体育座りをした。廊下掃除の女子に何度か注意されたけど、微々たるとして動かなかった。
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