大好き‥だよ。
『じゃあ、また明日な。桜井』

先生は私を置いて職員室に向かって歩き出した。でも、さっきから気になっていることがあって‥それをどうしても知りたかった私は、先生を呼び止めた。

『先生、1つだけ‥質問しても良いですか?』

『ん?』

呼び止めてから、これくらいのこと明日にすれば良かったと後悔してしまい、下を向いたままポツポツとしゃべった。

『あの‥その‥俊チャンの事なんですけど‥』

『松浦がどうかしたのか?』

『えっと‥俊チャンはいつ陸上をやりたいって先生に言ったんですか?』

『はっ?』

私の聞きたい事が伝わっていないみたいだった。だから、もう少し分かりやすく質問をした。

『さっき俊チャンが教室に入ってきたとき、4時30分にって言ってたじゃないですか。つまり、今日の放課後残るように前々から伝えていたって事ですよね?』

『まぁ~そういう事になるのか』

『いつですか?』

必死になって聞くと、先生は私の頭の上に名簿をポンっと置いた。

『そんなに知りたいなら自分で聞けば良いだろ?明日だって学校あるんだし。それに、今週の金曜日から陸上だって始まるんだから、その時にさ。
質問は1つって言ったよな?もう帰っていいか?』

『あっ、はい‥‥呼び止めてすみませんでした』

『おう』

先生が歩き出したのと同時に、私も下駄箱に向かって歩き出した。


これから週に2回、陸上の練習が始まる。授業が終わった後、宿題をやって練習場に移動して‥

前みたいに一緒に帰ったりできるのかな。前みたいに何気ない会話ができるのかな。前みたいに‥

「その為にも陸上の練習頑張らなくちゃ!」そう自分に言い聞かせて、帰り道は走って帰った。
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