大好き‥だよ。
カリカリカリ‥

隣では、俊チャンが一生懸命算数の問題を解いていた。難しい問題に直面すると「んだよ!」とか独り言を言っていて、つい笑ってしまった。

『何?』

『っえ?』

『だから、何で笑ってるの?』

『さぁ~(笑)』

『ほら、また笑ってる!』

平凡な会話なのに、それが凄く嬉しくて。どうでもいい会話に聞こえるかもしれないけど、不思議なくらい穏やかな気持ちになれた。

最近は俊チャンの背中しか見ていなかった。肩を並べて歩いていたのは華代か悠君。

避けていたんじゃない。避けられていたわけでもない。何となく‥今は距離を置きたかったのかもしれない。

そんな事を思いながら漢字ドリルをやっていると、ビリビリッと紙を破る音が聞こえた。じろっと横目で見ると、楽しそうに何かを作っていた。

次第に1枚の紙が形になっていき、完成したのは紙飛行機だった。

『どうするの?』

『こうするのさ☆』

俊チャンは紙飛行機を前後に動かし勢いをつけていた。

『ちょっ、待った!!』

止めに入ったけど1歩及ばなかった。程よい風に上手く乗り、的に向かって一直線に進んで行った。

『あっ‥』

スヤスヤ寝ていた大物は目を覚ました。

『松浦、桜井~!!』

顔を真っ赤にして長い長い説教が始まった。私‥何もしてないのに‥。先生曰く、注意しなかったのは「共犯」らしい。

そして20分後‥

『ったく、お前らは静かに宿題も出来ないのかよ。来週からは隣の空き教室でやれ。今日の罰として、宿題の量増やすから覚悟しとけよ!!』

『そんなぁ~‥』

ガクンと肩を落としていると先生が時計を見て叫んだ。

『お前等そろそろ行かなくて良いのか?初日から遅刻はないだろう』

時計を見ると同時にランドセルに宿題を放り込んだ。
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